サボテン通信(7)いかがわしい混合油
スチール041(通称サンダー)の牙城だった営林署のチェンソー。
それを崩したのが名機ハスクバーナ162でした。画期的な縦型ハイパワーエンジン、
人間工学に基いたハンドルデザイン、さらに軽量でありながら頑丈だった162は評判を呼び、
たちまちスチールを一掃。長野営林局管内のほとんどの営林署で使用されるようになったのです。
ところが問題は夏に起きました。「一回止めるとエンジンが掛からない」「熱くなると力が無くなる」
こういったクレームが連日舞込んできます。
スウェーデンは寒い国ですから、ハスクバーナは雪や寒さには抜群に強いのですが、
暑さはやや苦手な傾向はありました。しかし162はおおむね夏も良好なはずです。
さらに涼しい木曽ですからオーバーヒートへの懸念はしていなかったのですが・・・
クレームに対応するため頻繁に山の現場まで足を運び、チェーンソーを点検しました。
どれも機械的問題は見つからず、使用方法などチェックしたのですが、そこは営林署、
しっかり管理されて何も問題ありません。何より悩ましかったのは木曽より暑い地域で
162が調子よく働いていることでした。いよいよ手詰まりか、というときに当時のハスクバーナ
営業マン(F氏)から「このオイルを使ってみませんか?」と提案がありました。
ハスクバーナ純正50:1混合オイルです。当時混合オイルといえば、
20:1~25:1で混合するのが常識で、混合比を間違えてエンジン
を焼付けてしまう故障もよくありましたので、
50:1などありえない感覚でした。もちろんこのような
いかがわしいオイルを使うのは気が進みませんし、まして焼付き
でも起こしたら、完全に由井機械の信用失墜です。
しかしF氏があまりにもしつこくこのオイルの良さについて
熱弁を振るうので、少し面倒くさくなって「じゃあ持っていってみよか」
ということに。F氏は営林署の現場でも熱弁を振るいまくり、
50:1オイルへの疑心暗鬼120%の担当官をついに説き伏せ、
試しに使ってみることになりました。それから数日、改めて現場へ行ってみると・・・暑さの中、
山にはチェーンソーの快音が轟き、すべての162が元気に働いているではないですか!
現場担当官いわく「由井さんすごいな~あれは魔法のオイルか?」
要因は他にもあったかもしれませんが、この結果をみると燃料(混合油)が、今回チェーンソー
不調の主原因だったと言わざるを得ません。それまであまり気にしなかった混合油ですが、
良質のオイルを使うことがいかに重要か、身にしみた出来事でした。
混合油は潤滑のみならず、エンジンの洗浄、冷却にも大きな働きをしています。
また混合比を薄くできるということは、カーボンによるマフラー詰り、スパークプラグの汚れ等を
防ぐとともに、ガソリンの比率が高まることによる爆発力アップは始動性の向上、パワーアップ
につながるのです。さらに、排気も薄くなりますから人にも環境にも優しいですね。